【第二話】 ※前回のお話はこちら
ヤスシゲさんとの上高地へのお出かけを明日に控えた、9月9日。台風18号に伴う大雨が吹き荒れ、栃木県では600ミリを超える記録的降水量に鬼怒川が決壊し、大変な被害が出ていました。「ヤスシゲさん、残念ながら明日もお出かけは無理なようです。」スタッフが伝えると「ラジオで聞いたぞ。こりゃ大変な状況だな。」ヤスシゲさんも台風の被害について心配して、当然明日のお出かけは無理だろうと思っていたようです。再度バス会社に電話をし、「何回もすいません明日もキャンセルさせて下さい。9月18日でどうぞよろしくお願いします。」
三度目の正直。なんとか晴れて欲しいと願うスタッフでした。
いよいよ迎えた、9月18日。独り暮らしをされているヤスシゲさんのアパートに早朝6時に訪問に行き「おはようございます。ヤスシゲさん。昨日は雨が降りましたが、朝からお日様がヤスシゲさんお待たせしましたと言わんばかりの最高の天気です。今日は大丈夫ですよ。上高地に向かいましょう!」スタッフの言葉を受けヤスシゲさん「悪いな~大変だぞ。」ちょっと遠慮しながらも、大好きな山へのお出かけにウキウキとした表情が。
身支度を整え宅老所で早めの朝食を食べ、念のためバス会社に連絡をとり現地の様子を聞くと大丈夫ですよと教えて頂き、9時30分には調理のおばちゃんが作ってくれたおにぎりを持って出発しました。
高速道路を走っていると、姨捨インターの標識を見つけたヤスシゲさん。「ここ何十年も来てないな~。腹が減ったし姨捨サービスエリアでビール飲んでおにぎりが食べたい。」とリクエストがありました。トイレ休憩もかねてちょっと一休み。小腹を満たして、一路目的地に向かってひた走ります。
宅老所を出発して2時間強ようやくシャトルバス乗り場に到着です。車椅子を押しながらバスに近づくと停車中のバスが残念ながら車椅子に乗ったまま乗り込むことのできるノンステップバスではなかったため、案内係の方が無線で男性を1人を呼んでくれました。
案内係の女性とハイチーズ(右:ヤスシゲさん)
「ヤスシゲさん。しっかり手すりに掴まってくださいね。」運転手さんが上から、同行のスタッフが下から抱え込んでなんとかバスのステップを上がる感じでした。見るに見かねた観光客の方も手伝って下さりなんとか席に着く事ができました。「悪いな~悪いな~。」ヤスシゲさんも手伝ってくれた方に何回も挨拶して、「大丈夫ですよ。ご旅行楽しんでくださいね。」と温かな言葉をかけて頂きました。